ガーターベルトの過去
相変わらずアニメ『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』を楽しんでいる。
パンスト第11回放送の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ガーターベルト』でガーターベルトの過去が語られていた。
とても興味深い話だった。
前半はともかく、後半はおそらく嘘だと思われる。話の最初にガーターはこう語っている。
嘘は全てを隠し、また曝く。
この世で語られる全ての嘘は真実の扉を開くカギでもある。
開かざる扉は嘘というカギによって開くのか、あるいはそのカギが嘘なのか。
なので、お話としては、彼の過去の半分は真実を隠すための嘘なんだろうけど――個人的には全部ホントであった方が面白くて好み。
と、言う訳で哲学さんは全てが真実だろうなぁ、というロマンを前提に話を進めよう。
まあ、本編の中でもガーターの過去が嘘かホントかはぼやかされているのだけれど。
それはともかく、ガーターベルトの過去である。
順を追ってみていこう。
ガーターベルトは掃きだめのような街でウジ虫のようなチンピラとして生きていた。
そこから大概の悪いことに手をつけて、ヤクの売人もしてのし上がり、自分の兄貴分すら殺して裏社会の頂点に上り詰める。
この街一番のワルって奴である。
兄貴分を殺す時の台詞がポイント。
ガーターベルト「オレを縛る奴は許さん」
誰よりも何者かに縛られることを嫌い、自らの仲間にすら手をかけてのし上がったガーターベルト。
一見、アナーキー姉妹と同じアウトローに見えて、アナーキー姉妹は結構姉妹仲がよくて、仲間というか知り合いを大事にする。
そこが彼と姉妹の分岐点だったのだろう、彼に待っていた結末は一人でヤクを吸って悦に入ってるところで元部下らしき奴らに銃殺されるというオチ。(まあ、銃撃した連中が身内というのは哲学さんの想像だけど、話の流れ的にはそっちの方が自然な気がする)。
で、死んでしまった彼がどうなってしまったのか。
真っ白い部屋で、ただ一人「dunce cap」を被せられ、椅子に座らされるガーターベルト。
「どこだ? ここは……」
彼の前に一枚の紙がひらりと落ちる。
――『HEAVEN』――
「馬鹿な。オレの行き先は地獄と決まっている」
更に紙が舞い降りる。
――『MISSION』――
「mission」には幾つかの意味がある。「布教」。「使命」。
「オレに宣教師にでもなれと言うのか」
紙を投げ捨てるガーターベルト。
「命令されるのはごめんだぜ」
そして舞い降りるのはただ一枚の矢印が書かれただけの紙。
神は語らず、ただその行き先を示すのみ。
それを見てガーターベルトはあまりの馬鹿馬鹿しさに笑い出し、立ち上がり、帽子を投げ捨て、天に向かって叫ぶ。
「おい、よく聞けこの包茎野郎!
オレ様は誰にも縛られねぇ!
懺悔も贖罪もしねぇ!
てめぇのヘニャチンをオレの肛門で締めちぎってやるよ!
このタマ無しがぁっ!」
神をも恐れぬ反逆の叫び。
それに対し、天雷がガーターベルトの体を打ち貫き――気がつけば彼は見知らぬ土地に立っていた。
ご自慢のドレッドヘアーがアフロにかわり、体もズタボロだ。
「くっそ、むかつくぜ!」
そして、周囲の様子がおかしいことに彼は気付く。
一面に広がるマグマと溶岩。見たこともない火山地帯。
『そこが地獄であったのならばまだわしは幸せだったのかも知れない。
しかし、わしに与えられた試練はさらに過酷なものだった』
そして地球の創世記から始まり現在に至るまでの長い長いガーターベルトの旅が始まることとなる。
こっからの話は非常に嘘くさいんだけど、哲学さんは大好きだ。
恐竜時代からほ乳類の時代に行き、アダムとイブから知恵のリンゴをふんだくって賢くなり、天雷と共に神が再び行く先を指し示すけど、無視したら洪水に巻き込まれて、ノアに助けられて再び神の啓示を受けて反逆したらクジラに喰われて、モーゼのエジプト脱出のどさくさに紛れて地上に帰ったら神殿の柱に再び神の啓示。むかついて柱をぶん殴ってたら兵士達に捕まってミイラにされてピラミッドに生き埋めにされて、盗掘者達に発掘されて地上に脱出したら十字軍の戦いに巻き込まれる。
多くの人が死に、戦場には敵味方を問わず数多くの死体が横たわる。
そして、荒野に一人、死ねない男がただたたずむ。
足下を見れば、やはり矢印が一つ。神の啓示がなされる。
神は語らず、ただ行く先を示すのみ。
ガーターはもはや逆らわず、世界を静かに放浪し始める。
バイキングになったり、フランス革命に参加したり、ザビエルの代わりに日本に宣教師に来たり、ナチス党に参加したり、スーパーマンになったり……。
「それからもわしは様々なものを見た。
繁栄、滅亡、創造、破壊、生と死……。
わしを縛り、苛み続けるこの呪いと共に。
そしていつしかわしは悟った。この苦しみの中にこそ真の喜びがあるのだと」
『ガーター〜我が使命〜第一部 完、長らくのご静聴ありがとうございました。
なお、お帰りの際には西側通用口から……』
その頃にはパンスト姉妹は寝てて、起きたら「あたしらここでなにしてたっけ?」『どーでもいいわ』と馬鹿馬鹿しくて帰ってしまう(笑)
まあ、例えばの話、娘達にとっちゃ、父親の若い頃の武勇伝ほどつまらない話はないだろうから、育ての親っぽいポジションのガーターの過去話なんて聞いても彼女らにとってもつまらないだろうからこの反応は当然だろう。(※別にアナーキー姉妹がガーターと親子と言う訳でなく、似たような間柄である、てだけです)
この流れで思ったのは、ガーターベルトの半生ってグレンラガンの螺旋王ロージェノムに似てると言うことだ。
誰にも縛られることを拒絶し、反逆するも、最終的には神に逆らえず最終的には神の教えを広めるMISSIONについてしまったガーターベルト。
かたや、宇宙の滅びをふせがんとするアンチ・スパイラルの支配に反逆するも、屈して逆に人類を統制する側になってしまったロージェノム。
彼らの人生はとても似たところがある。
また、彼が昔ギャングのボスだったとすると、悪魔姉妹たちのボスである市長と昔知り合いで、対立してるというのは当然の摂理ともいえよう。
じゃあ、ガーターベルトは昔の反骨心を全て奪われ、ロージェノムの如く千年の倦怠を覚えるような無気力な日々を過ごしているのか。そのキバを剥かれたのか。
答えは、ノーである。
ガーターベルトはアナーキー姉妹に対して神父らしくことあるごとに理を説くが、彼自身も、全裸レースを主催したり、ギャンブルの胴元になったりしている。反社会的な行為に手を染めているのだ。
ただ、彼がそうした行為に及ぶ場合は、大抵「Mr.G」に変装している。
彼は、「ルールを破ること」が「悪いこと」であると自覚はしているのだ。だから、変装しているのだろう。
やや飛躍するが、彼の行動理念としては、「ルールを破るのも守るのも人の自由。だが、破ることは悪いことなので、破るならバレない程度にこっそりやれよ。おおっぴらにはやるなこのアバズレども」てところではないだろうか。
苦難の末に、あんなに縛られることを嫌っていた彼が縛りプレイにはまるくらいのマゾになってしまったのはギャグなオチだが、ルールを守ることと破ることの両方をきっと肯定していると思う。
だから、結構人間的な深みがある……のか? まあ、男のケツを掘るのはきっと反社会的な行為ではないんだよ、きっと(笑)
それはそれとしてこういう、「救いようのない悪党が超常的な存在に『気づき』を得て救済される」と言うモチーフは結構昔からある。
神様ももっと他に救うべき人間がいるだろうに、何故か悪党に救済をくれるんだよね。まあ、神とは限らないけど。
似たような話だと、ディケンズの『クリスマス・キャロル』とか。(神は出てこないけど)。『ファウスト』とか。(神は出てこないけど)。
あと、キリスト教系列だと、使徒のパウロとかね。パウロはキリスト教徒をバンバン迫害していたのに、途中で回心して誰よりも敬虔なキリスト教徒になったという人物だ。
この類型の話、なんのかので結構感動してしまう。
最初ら辺は「悪党の癖に何を今更……」と読んでたらいつの間にか読み終わる頃には「あんな悪党だった主人公が、こんないい奴になって……」て感動できるストーリーライン。
たぶん、どんな悪党でも救えますよーて希望があるからいいんだろう。デジモン02のケンちゃんとかいいよね。(古い)
最近のラノベだと、『ゼロの使い魔』のガリアの悪逆の王ジョセフ王が好き。弟の真実を知って満足に死んでいくあのエピソードは大好き。
まあそれはそれとしてアウトローとして失敗しつつも、人間的に成長したガーターベルトが、アナーキー姉妹というアバズレ天使のお目付役についていると言うこの構図。
アウトローではなく、アナーキーである彼女らがこれからどうなっていくのかとても楽しみ。
自由ってのは、結局縛るものがなければ、それを規定することは難しい。ルールがあるからこそ、ルールを破ることが出来る。
そこら辺から、グレンラガンからまた一歩進んだ回答がパンストの最終回で見れればいいなぁ、と思う。
「ナッシングツールーム」でパンティが天界に帰る方法として軌道エレベーターもどきというかバベルの塔もどき考えてたけど、あそこら辺が伏線になるのだろう。
いよいよ最終回が近づいてきたって感じ。
実に楽しみだ。