シュナイゼルとルルーシュのディスコミュニケーション

TURN 23 『シュナイゼル の 仮面』の感想〜ルルーシュとシュナイゼルが敵対する理由がわからない-物語三昧〜できればより深く物語を楽しむために

 上のエントリー見て、ああ、そういえばシュナイゼルルルーシュは相容れないものだから対立するのは当然と考えてたので改めて考えされられた。
 で、実際なんで対立するかといえば、ルルーシュ側の理由は一応stage23でベッドルームで背中合わせに座るルルーシュとCCの会話の中で出てきている。

CC「もう、充分じゃないのか。お前はよく頑張った」
ルルーシュ「俺が悪をなさねばならない理由は分かっているだろう。それに、ダモクレスは人を記号とするものだ」

 つまり、ダモクレスによる恐怖政治は、実質シャルル皇帝の嘘の世界と同じで個人を否定し、人を記号化させるものだ、とルルーシュは考えていると思う。
 人という存在を信じていないシュナイゼルのやり方を認めれば、それでも明日が欲しいと叫んだルルーシュの決意を無辜のものにするから――という感じ。

 でも、ここで考えるべきは、ルルーシュシュナイゼルを読み違えている可能性が高い、と言うことです。
 二人の仮面(ペルソナ)がどんな風になっているかというと、ざっと見れば以下の通りだと思います。

〜〜 ルルーシュ シュナイゼル
先代ブリタニアの悪例を崩し、世界に平和をもたらそうとする正義の皇帝 聖人君子として、周りに正論をはくが、腹の見えない男
悪逆皇帝としてギアスを使い、世界を支配しようとする ダモクレスによる恐怖による人類の掌握
裏の裏 ゼロ・レクイエムによる世界の救済を企む? ???????

 で、作中の星刻や、ディートハルトなどの「切れ者」として出てくる人達はルルーシュシュナイゼルの「裏」までは読んでいるけど、その「裏の裏」にある意図までは読み切れていない……と思う。ディートハルトもシュナイゼルの「裏」を見て狂喜乱舞しているけど、それすら素顔でないことに気付いてるかどうか。
 客観的な視聴者の視点で見れば、シュナイゼルルルーシュも恐らく目指している所は似たようなところにあるのではないか、と思えるけれど、ルルーシュも多分、シュナイゼルの「裏」までしか読めず、「裏の裏」で何を考えているかまでは予想してない気がする。あるいは、「信用していない」と言うべきか。
 シャルルの本性があんな感じで自分に優しい嘘のない世界を創ろうとした狂人であり、その息子であるシュナイゼルが徹底的に人を信用せずに大量破壊兵器を突きつけた人類に対する教育を行おうとする恐るべき男である、とルルーシュは認識しているように思う。だから、ロイドやニーナの手を借りてシュナイゼルを止めようとしている。シュナイゼルの目指すものが、自分と同じように「世界を統一した後、その先にある」と言うことに考えが至っていないと思う。
 あるいは、その可能性も考えているだろうけれど、大量破壊兵器を衛星軌道上に突きつけることの先に何があるか少なくとも、ルルーシュには想像が付かなかったのでその可能性は埒外だと斬り捨てたのではなかろうか。
 だから、ルルーシュ的には「あいつは大量破壊兵器で世界を支配しようとして居るみたいだが、俺は更にその先に『ゼロ・レクイエム』を作ろうとしている!」とシュナイゼルより先見の明がある、と自負しているのだと思う。

 けれど、シュナイゼルルルーシュのゼロ・レクイエムすら見越した上で、更に別の世界政策を用意している様に思う。
 シュナイゼルは今週のラストでこう言っている。

シュナイゼルルルーシュ。もし、私を倒そうと考えているならば君はそこまでだよ。
 仮面を使いこなせない人間に勝利はない」

 ルルーシュの策を利用して、シュナイゼルが打ち倒されることによって何かが為されるようになっているのかもしれない。
 この口ぶりだと、ルルーシュシュナイゼルに「勝ってはいけない」状況がこの先に用意されているように思われる。

 現在の所、この「人類の最終決戦」もどきは「善と悪」の戦いではなく、「悪と悪」の戦いみたいなものだ。
 ルルーシュルシフェルなら、シュナイゼルニャルラトホテプ、て感じ。(あんまりいい例じゃないなぁ)
 たぶん、ルルーシュが当初予定していた人類の最終戦争は超合衆国とブリタニアによる「善VS悪」の構図だったのではないかと思う。
 それで、悪が勝って、世界を悪が覆い尽くした後、ゼロ・レクイエムで世界は善に満たされる……予定だったのだろうと思う。
 でも、シュナイゼルはそれをよしとしなかったのだろう。
 シュナイゼルがコーネリアに語った人類の教育はナナリーについた嘘と同じく本心ではないと思う。長いけどこんな台詞。

シュナイゼル「嘘も方便だよ。ナナリーにルルーシュと戦うと決意してもらうためには仕方ない」
コーネリア「そうやって、兄上は人を操るのですか」
シュナイゼル「コーネリア、人々の願いはなんだい?飢餓や貧困、差別、腐敗、戦争とテロリズム。世界に溢れる問題をなくしたいと思いつつ、人は絶望的なまでに分かり合えない。ただ……」
コーネリア「理想としては分かります。ですが、民間人は……」
シュナイゼル「……ふぅむ。戦争を否定する民間人も警察は利用するよね?
 みんな分かって居るんだ。
 犯罪は止められないと。
 人それぞれの欲望は止められないと。
 だったら、心や主義主張はいらない。システムと力で平和を実現すべきでは?」
コーネリア「待ってください! ルルーシュを打ち倒すためではなかったのですか!
 これでは世界中が……恐怖で人を従えようというのですか!!」
シュナイゼル「平和とは幻想だよ。戦いこそが人の歴史。幻想を現実にするには、躾(しつけ)が必要では?」
コーネリア「人類を教育するつもりですか! そのようなこと神でなければ許されない!!」
シュナイゼル「だったら神になろう」
コーネリア「――っ!!!」
シュナイゼル「人々が平和を私に望むのならば」
コーネリア「――あなたは!」
(中略)
シュナイゼル「そう、たとえ10億20億の命がなくなろうとも、恒久的な平和が」
コーネリア「違います! 恒久的な平和など、それは……!!」

 人間の個人の心や主義主張を否定してしまうのはシャルル皇帝のアーカーシャの剣の計画と同じ。でも、シャルルを嫌っていたシュナイゼルがそんな父の二番煎じみたいなことはしないと思う。

シュナイゼルの視線の先にあるもの- 未来私考

 こちらでは三国志か冷戦みたいな感じで国を分けて対立させることによって、世界のバランスを保とうとしてると考えてますが、それもまた違う気がする。
 だって、哲学さん的には、ルルーシュに勝つつもりはなく、ルルーシュに「最悪の勝ち方をさせる」ことが目的だと思うので。
 妹殺しや兄殺しはもはや今更だし、――ありきたりだけど、大量破壊兵器の恐ろしさをこの戦いで最大限に人類に知らしめた後、その技術を世界中に拡散させるつもりかもしれない。そしたら、どの国も互いを牽制して攻撃出来ない世界観が完成する。
 ……それも違う気がするなぁ。
 ここまで書いておいてあれだけど、シュナイゼルの真意についてはお手上げだ。哲学さんには分からない。


 でも、ルルーシュがなんでゼロ・レクイエムを目指しているかというとそれは多分、スザクの為だと思う。

スザク「約束を思い出せ!」

 シャルルを倒した時点でのルルーシュの生きる目的ってせいぜい「CCに笑って死なせてあげる」ことくらいだろう。
 それなのに、世界に対してあんな大それたことをしているのは、ユフィの件に対して負い目のあるスザクに対する償いではなかろうか。
 つまり、キャスティングボードを握っているのはルルーシュではなく、スザク。
 今、ルルーシュはスザクの望む世界を作るために戦っているのだ!――と思う。
 ユフィの理想を実現するために、スザクはもう立ち止まれない。で、そのスザクは自分の目的を果たすために、ユフィの仇であるルルーシュすら利用して世界を変えようとしている。
 だから、実はこれは「スザクの理想VSシュナイゼルの計算」、という対立で、もはやルルーシュは舞台から降りている――と哲学さんは思う。
 そう考えると、CCの「もういいんじゃないか。お前はよくやった」とか言う台詞は「お前はスザクのために充分尽くした」という風にも取れると思う。
 だからこそ、ルルが折れそうになった時、スザクが胸ぐら掴み上げて、「戦略目標は変わらない」と叫んだのだと思う。

 つまり、今の戦略目標は、スザクが決め、それをルルーシュが実現のために計画を立てるというスザクという王にルルーシュという参謀が仕えている構図とも取れる。


 ここまで妄想したらある程度満足したので今日は寝よう。