NHKにようこそ! 漫画版感想
小さくまとまっちゃったかなあ…?
これも、ひとつの青春
「NHKにようこそ!」漫画版の八巻読了。
成る程こうきたか。
簡単に感想を書いておく。
なんのかんので佐藤君は強い――いや、賢い男だなぁ、と思った。
恋愛って結局錯覚である。
昨日読んだ、「酸素は鏡に映らない」と言う話がある。
それは要約すれば、人間て酸素みたいな物だ、というお話。
酸素を吸わないと人間は生きていけない。でも、酸素って実は凄い毒。吸いすぎれば酸素中毒になって死んでしまう。
けど、毒と分かってても吸わないと人間は生きていけないのだ。
それと同じで、人間は他人に裏切られたり、裏切ったりしてしまう毒性の生き物。でも、その他人との触れ合いがないと結局人間は生きていけない。だからずっと、人間は毒だと知りながら他者と関わるし、自分が他者の毒になってしまうかもと怯えつつもやはり他者に関わっていくのである。
でも、そんなことを自覚するのは大抵の人間にとっては耐えられないので「愛」とか「勇気」とかそういうもんをなんとなく信じて人間て素晴らしいと想いながら生きていく。色々な欠点に目を瞑って、錯覚して、生きていく。
まあ、こいつは変なヤツだけど悪いヤツじゃないとか、こいつはここが気に入らないけど、まあいいか、なんて色んなことに「友達だから」とか「家族だから」とかいう理由で目を瞑る。
で、それが最大限に発揮されて、他の諸々の欠点が見えなくなって「好きだーーーっ」てなってしまえばそこから恋とか愛とかが生まれてくる。人間の神経システムはそんな感じで錯覚を起こしやすくなっているので、ピンチの時に異性と二人きりになればとても恋愛に発展しやすい。いわゆる一つの吊り橋効果だ。
で、たいていの人はそれで満足できるのだが、佐藤君は土壇場でそうは行かなくなった。
なんのかんので結局状況に流されてなんとなく岬ちゃんを好きなってたんだと気付いて、しかも今までの人生ずっと他人に流されたまま生きてきて、さらには周囲の環境――それこそNHKの陰謀によって、自己満足に陥りかけたのだが、最後の最後で――これって、自分の意志じゃないと気付いてしまった。
だから、全部醒めて一からやり直すことにした。
やっぱ自分でなんとかしてみるわ、と思い直したのである。
そう考えるとなかなか健全なラストだった。
原作版だと他に悪がいることにして、だから団結しましょうね、という絆を分かりやすくて明快な物にして、でもそれを頼りに生きていくようなお話だったけど、そこから更に一歩進んだ感じ。
まあ、まだ一回しか読んでないので後で感想は変わるかも知れない。
まあなんにしても、それなりに楽しめたシリーズだった。
漫画版の佐藤君だと数ヶ月もせずにやっぱりクリエイターは無理だぁぁぁ、とか言いそうだが、一年も続けばなんとかなりそうでもある。人間一年続ければどうにかなるもんだ。