<2005年 仮面ライダー響鬼編>

「鍛えてますから!」
 てな訳で平成の仮面ライダーアマゾンを目指すべき作られた『仮面ライダー響鬼』。
 アマゾンも昭和ライダー仮面ライダーの原点回帰を目指して作られた作品で、この作品もそれを目指して平成ライダーの最初の作品であるクウガスタッフが集まって作っている。
 モチーフは『音』と『鬼』。実は魔法モチーフで別の話が作られる予定だったけど、戦隊物に企画をとられて、魔法ものはマジレンジャーになりました。
 それはともかくとして、主人公の俳優は当時33歳の細川茂樹。最年長主役ライダー!
 実は主人公がもう一人いて、中学生の明日夢くん。
 母子家庭で父親を知らない気弱な少年である明日夢くんが、ダンディで格好いいヒビキさんの背中を見て成長していく人間ドラマである。
 働くお父さん格好いい! みんな働こうぜ! でも働くには鍛えないとダメだよ! 努力しようよ!
 何度でも失敗してもいいんだ。努力してれば、いつかオジサンみたいな格好いい大人になれるさ。


 てな訳であらすじー。
 2005年。中学生の明日夢くんは親戚に会いに行く途中、ヒビキ(細川茂樹)という不思議な中年男性に出会う。
 実は彼は人知れず妖怪――魔化魍(マカモウ)を倒す鬼だった。
 古来より、自然のひずみが魔化魍という妖怪を生み出してきたが、それを長年肉体を鍛えることによって自らを"鬼"と呼ばれる超人的な力を持つ存在へと変身し、倒してきたのが彼らである。
 要は、鬼に変身して妖怪退治をしているのが仮面ライダーと言うこと。
 古来から妖怪退治を続けていた訳だから、序盤はラスボスみたいな存在はなく、また大きなストーリーラインはない。ただ単に仕事として妖怪退治をヒビキさんがする傍ら、多感な時期である明日夢くんの成長をヒビキさんが見守ると言うのがこの物語のメイン構造。
 クウガの時の人助けするついでに怪人を倒す感覚に近い話作りである。
 とはいえ、妖怪達は当然山奥とか海とか、自然の多い場所に出るので、撮影も山とか海とかへの出張ロケばっかりになる。
 特に第一話なんかは屋久島まで撮影に行っている。
 おかげで物語の前半は凄く丁寧に作られているものの、人間ドラマが丁寧に作られているものの、活劇的には大きな動きはなく、さらには度重なる出張ロケによって制作費が莫大に消費され、撮影納期も大幅に遅れた。
 以上の理由が原因かは公式にコメントされていないが、最終的にはプロデューサーと脚本家のすげ替えという異常事態が発生することになる。
 後半のスタッフすげ替えにより、物語は日常描写が減少し、明日夢くんの成長譚より、鬼の戦いが優先され、さらには街に妖怪が出るようになり、今年は数百年に一回の異常事態でそれを解決しないと行けない!という大きな物語も作られた。
 物語の後半のストーリーを言うと、明日夢くんがヒビキさんの弟子となり、鬼の仕事を継ごとうする。
 が、同じ人を救う仕事として明日夢くんは医者にも憧れ、どちらの道を選ぶか迷い続ける。
 最終回で、明日夢くんはヒビキさんに「僕は、鬼にはなりません、医者を目指します」と告白。
 すると、ヒビキさんも「そうか。でも、キミは俺の弟子だよ」とにこりと笑いかける。
 なんのかんので、別の道を行きながらも、父親の居ない明日夢くんにとって、ヒビキさんは人生の先輩であり、目指すべき大人であり、父親的存在であることに代わりないのであった。
 あ、数百年に一度の大異変はヒビキさんがなんとかしました。でも、ヒビキさんの妖怪退治の日々は続いていくのでした。
 鬼達の戦いは終わらない。


 以上のように、ショタ可愛い明日夢くんと、ダンディなおじさまのヒビキさんの組み合わせに若奥様達のハートキャッチ!を狙ったか分かんないけど、そんな需要もあったとか。
 それはともかくとして、前年のブレイドの失敗に懲りたのか制作陣は演技力の高い俳優をメインキャストに布陣。
 元々ライダーシリーズは若い俳優の登竜門で一年かけて新人俳優の成長を見守るって言う側面もなきにしもあらずだったけど鬼達はみんな年齢が高い=中堅俳優が多かった。
 そして、ブレイドよりも、「仕事をしている大人」を丹念に描いてたと思う。
 バトルものとしては、鬼達は、清めの音によって妖怪を浄化させるという設定。
 なので、仮面ライダー響鬼は太鼓のバチを持って妖怪をガンガン殴り続けるという、史上初の撲殺スタイルの仮面ライダーである(笑)
 デザインも奇抜で、目がなかったり、斬新なデザイン。
 また、今までは普通の人間が変身アイテムを手に入れたり、ある日新しい力に突然覚醒したり、という展開が多かったが、この作品における仮面ライダーたる鬼達は何年も修行して力を手に入れたプロ中のプロ。
「鍛えてますからっ!」
 というヒビキさんの口癖はこの近辺に多かった若者が突然強力な力を手に入れて暴れる系の話を揶揄する的な意味もあったのかもしれない。


 2005年は、『勇者王ガオガイガーFINAL GGG』が放送されていた。
 後、魔物退治ものとしては、アニメ版『灼眼のシャナ』が第一期放送開始。
 同じ音楽モチーフとして『創聖のアクエリオン』、『交響詩エウレカセブン』が放送。
 後、ブレイド関連になるけど、人間と異物との交流or戦い的な話として『SoltyRei』とか『蒼穹のファフナーRIGHT OF LEFT』、『BLOOD+』とか放送された。
 あーあと、2005年は京都議定書発効の年だから、自然への回帰的な側面がヒビキにはあったと思われ。
 自然回帰的、地球回帰的テーマでも、『創聖のアクエリオン』と『交響詩エウレカセブン』は共通項があるかもしれない。


 なんにせよ、『頼れる大人』『仕事してる大人』をヒーロー像として描きつつ、『地に足のついた人生』、『終わらない日常』を描いたのが響鬼だったと思う。
 が、そんな『お堅い』話が微妙に子供に受けなかったのか、反動で今度はまた破天荒なヒーローがやってくることになる。
 その名も『仮面ライダーカブト』。
 天の道を行き、総てを司るニートの登場となるのである。