<2004年 仮面ライダー剣 編>
「オンドゥルルギッタンディスカー!」
と言う訳で仮面ライダー剣(ブレイド)編である。
それなりに人気の出た仮面ライダー龍騎の2匹目の土壌を狙ったのか同じカードバトルで今度はトランプモチーフ。
しかも、龍騎と同じバトルロイヤル要素もあり。
さらには、『仮面ライダー』が職業として登場するのだ。折しも就職氷河時代でニートが大量に出て、働かない人が増えた時代。
ヒーローに憧れて夢ばかり追いかける人達に、じゃあそのヒーローが職業としてあるよ、仕事しろ、働け! という作り手の悪意が(ry
それはともかく、物語は以下の通り。
世界の進化は、実は古代より、不死の化け物(アンデッド)53体のバトルロイヤルによって決められていた!
今人間が繁栄しているのは一万年前にヒト・アンデッドが生存バトルファイトを制覇したからだった。
しかし、過去に封印されていたアンデッドの一部の封印が解けて再びバトルファイトが再開。
そのアンデッド達を封印するために政府は対アンデッド機関を作り、仮面ライダーシステムを開発し、優秀な人材を仮面ライダーとして雇った。
つまり、仮面ライダーは公務員なのだ。仮面ライダーはカードに封印したアンデッドの力を使って仮面ライダーに変身して、封印されたアンデッドと体を同調させることによって戦うのである。シャーマンキングの憑依合体だね。
だが、第一話でその政府機関はアンデッドの襲撃により壊滅。
その襲撃現場には主人公剣崎の先輩ライダー橘がおり、剣崎は叫ぶ。
「オンドゥルルギッタンディスカー!(本当に裏切ったんですかっ!)タジバナザーンダジバナザーン!(橘さーん! 橘さーん!)」
しかし、先輩は実は政府の研究者達のせいで自分の体がボロボロになっていると吐露。
「オデの体はボドボドダッ!(俺の体はボロボロだっ!)」
「ウソダドンドコドーン!(嘘だそんなことーっ!)」
……ごめんふざけすぎました。
実はこの年のブレイドの役者はみんな滑舌が悪くて、変な空耳がネット上で大流行し、間違った社会現象をネット上で引き起こすことになる。
それはさておき、滑舌が悪いながらも、剣崎達はなんとか他のアンデッド達を封印していく。
だが、剣崎達政府のライダーの他に相川始という謎のライダーがいた。彼は伝説のアンデッドで他のアンデッドとは違う特別な存在「ジョーカー」だった。
ジョーカーはこの生存バトルを促進するための殺戮マシーンであったのだが、ヒトアンデッドを封印してそのカードを手に入れたことで逆に人の心に目覚めてしまい、また剣崎達と共にライダーとして戦っていく過程で人間を好きになっていってしまう。
アンデッドの封印は順調に進んでいくが、その中でとんでもないことが明らかになる。
もし、ジョーカーが最後の一人として生き残ってしまった場合、世界が滅んでしまうのだ。
だが、かつては殺戮マシーンであった相川始も今や人の心を手に入れ、人間を守りたいと思っており、剣崎とも強い友情で結ばれていた。
他の勢力や、先輩の橘さんも始を封印しろと言ってくるが、剣崎はそれを受け入れられない。人間ではないとしても彼は仲間なのだ。
それ故に、剣崎は始を封印することが出来ず、ジョーカー以外のアンデッドを全て封印した時に、世界の崩壊が始まってしまう。
世界中にゴキブリ型のアンデッドがわんさか現れて世界中はゴキブリ・アンデッドによって滅ぼされる……かと思われた。
そこで、剣崎は仮面ライダーとして必要以上に戦い続け、封印したアンデッドとの同調率を上げ続け、ついには自分自身がアンデッドになってしまう。
しかし、それによって生存バトルは白紙撤回。何故ならばアンデッドが二人になったからだ。
バトルファイトは最後の一人になるまで戦い続けるもの。参加資格を持つ化け物が二人になったので延長戦に突入という訳である。
化け物になってしまった剣崎は言う。
「お前は、人の中で生きろ」
そう言って剣崎は人々の前から姿を消すのであった。
剣崎と始……この二人のアンデッドが出逢い、戦わない限り、永遠にこの平和は続くであろう。
しかし、友を守るために、化け物となった剣崎は永遠に放浪を続けることになるのである。
てな感じで、凄い自己犠牲エンドでした。
ラストの脚本はアニメ版鋼の錬金術師のメインライターを担当した會川昇先生。
時期的には劇場版アニメのハガレンを終わった後にブレイドのラスト数話を書いたことになる。
実に、會川先生らしい自己犠牲な話である。
で、「職業としてのライダー」という側面は結局第一話でご破算し、しかも頼りの先輩は裏切ったり、敵に操られたりともう何を信じていいのやら状態。(でも、正気を取り戻した橘さんは物語的に一番格好いいところを全部奪っていくという凄く美味しい人だった。)
さらには物語後半で追加加入するライダーは敵が開発したライダーシステムで変身し、剣崎達に襲いかかってくる。
そんな中で、最後まで貫いたのは、人を守るために戦うという、剣崎の意思と、人の心を持ってしまった化け物たる相川始との友情だったという。
やっぱり友情は大事だよね。
ヒーロー像としては、剣崎はドジだが明るい熱血漢。相川始はクールで無口で、でも親しいものには不器用な優しさをみせる。
先輩の橘さんは、早とちりで裏切ったり、敵に洗脳されたりするが、正気の時は頼れる先輩(?)。実のところSEEDのアスランみたいな人。
後輩の睦月は生来気弱で争いを好まないが、アンデッドに支配されてからは暴走しやすくなった。
……あんまりいいヒーロー像を提供できたとは言いにくいかも知れない。
この時期は遊戯王の原作が終了するも、アニメもカードゲームも人気絶好調。
さらには、『ガンダムSEED DESTENY』がアニメ放映開始。
後、『龍騎』と物語構造の似ている『Fate/stay night』のPC原作が発売。
あと、宮崎監督は『ハウルの動く城』を公開。
ポケモンは初期リメイクの『ファイアレッド・リーフグリーン』発売。
後、大河ドラマでは『新撰組!』をやってた。斉藤一が「オダギリジョー」なのが個人的に感慨深い。新撰組も、『仕事として戦う』と言うモチーフでは一緒かな。
それからそれから、自己犠牲かつ、みんなの為に戦うと言えば『武装錬金』。こちらも2003−2005年にジャンプに連載されていた。
あと、ドラマ界では「韓流ブーム」が開始。「冬のソナタ」を始めとして爆発的な韓国ドラマ人気が起きた……とか。(哲学さんはあんまし興味なかった)
なんにしても、ブレイドは役者達の滑舌の悪さがネタとして先行し、内容としては余り周りに影響を与えなかったというかそれ以上の要素が周りに伝わらなかったというか、いちいちパットしない印象はある。
とはいえ、イケメン4人が主人公だから相変わらず腐女子人気は高かった。剣崎×始や、剣崎×橘とか。そこで同時期に腐女子人気の高い大河ドラマ「新撰組!」が放映されてたのはなんだか興味深い。
後、この時期もテニスの王子様の腐女子人気は高かった。というか、大体腐女子という言葉が市民権みたいなものを得たのはこの前後の時期だったように思う。
で、なんにしても、仕事としての仮面ライダーを上手く表現できなかったこともあり、次はしっかりと仕事をしている大人の男が主役。
そして、原点回帰を目指して、クウガスタッフが再結集。
仮面ライダー響鬼が制作されることになるのだった。
つづく