<仮面ライダーからみる2000年代の物語 まとめ>

 さて、色々と仮面ライダーの10年間を見てきたが、最後にざっとキーワードでまとめよう。
 それぞれの仮面ライダーを知ってる人はここから読んでも構わないですけど、知らない人は前日の記事を読んでいくといいかもしれません。

○2000年 クウガ

 『超古代文明との対決』『分かり合えない敵との戦い』『リアル志向(高2病)』『緻密な設定』『自己犠牲型主人公』(みんなの笑顔の為に戦う)

○2001年 アギト

 『人類と進化した新人類』『神と天使』『創造主への反乱(=not神殺し。神さまほっといてくれ系)』『仙人型主人公(新人類)』

○2002年 龍騎

 『バトルロイヤル』『それぞれの正義』『他者の正義(価値観)の肯定』『異空間バトル』『ループ構造(パラレルワールドでいい結果が出るまで何度もやり直し)』『カードバトル』『勝者はなんでも願いが叶う系』『自己犠牲型主人公(人間を守るために馬鹿馬鹿しい戦いを止める!)』

○2003年 555

 『人類と進化した新人類』『夢敗れた者達』『夢の守り手』『無気力系主人公(自分にはやりたいことがない。けれど、夢を持つ人を守る為に戦う)』

○2004年 剣

 『バトルロイヤル』『カードバトル』『仕事がヒーロー』『人の心を持ってしまった化け物』『自己犠牲型主人公(化け物の友人を守るために、自分も人間をやめて化け物に)』

○2005年 響鬼

 『妖怪もの(=自然主義的)』『和風』『師と弟子』『終わらない日常』『頼れる大人』『仕事がヒーロー』『地に足のついた人生』『母子家庭』『少年の成長』『鍛錬系父性主人公(自己を鍛え、人間として完成している。子供が目指すべき大人としての主人公。30代)』

○2006年 カブト

 『宇宙人もの』『人間に擬態する化け物』『異種族との共存』『高速世界』『軌道エレベーター』『タイムスリップ』『隕石で世界崩壊』『世界の全てを敵に回してもたった一人の大事な人を守る』『中二病』『説教系主人公』『天才型最強系主人公』

○2007年 電王

 『時間旅行もの』『化け物とのバディ(相棒)もの』『人間の記憶と過去』『未来からの敵』『不幸な主人公』『憑依型変身』『肉体的最弱主人公 (しかし、誰よりも強い心を持つ)』

○2008年 キバ

 『魔族と人間(異種族との共存もの)』『純血の兄』『ハーフの弟(主人公)』『偉大なる父』『大河物』『受け継がれるもの』『王の物語』『世界の拒絶とひきこもり』『中二病』『音楽』

○2009年 ディケイド

 『クロスオーバーもの』『リメイクもの』『情報圧縮』『異次元の旅(ロードムービー)』『物語の破壊と再生』『世界の拒絶→受け入れ』『説教系主人公(=ハーレムメーカー。異世界仮面ライダーを説教することによって、実はその世界の仮面ライダーを口説いていたと捉えられる)』

 ざっとこんな感じ。



 こうしてみると、平成仮面ライダーは『異種族との共存』ものが多い。これは、制作スタッフ側の一つのグランドテーマなのだろう。
 ていうか、『クウガ』と『響鬼』以外は全て、『違う価値観を持つものといかに共存するか』を模索してる。それって、善悪二元論の克服を目指していた、と言えるかな。
 一方、『クウガ』と『響鬼』は頼れる大人とか、「理想的な人間像」みたいなものを追ってる感じ。
 それから、『響鬼』『カブト』『キバ』『ディケイド』は過去から未来への時間軸の幅が長く、物語に積極的に『歴史』を取り入れていってると思う。
 大きな物語を語るためには、やはり、その世界で歴史の流れを形成していくことが本流になってると思う。
 そして、『ディケイド』は今までの物語の『クライマックス(=『祭壇』)』を何度も繰り返し、その先へと進もうとした。(その先に行けたとは言わない(笑))
 後、10年間の最後の『ディケイド』が、今までの資産を上手く利用して、『情報圧縮』を利用した物語にしてる辺りが、とても2000年代の終盤の物語だと哲学さんは思う。
 あーあと、意外と「共同体から突き放されて役割のなくなった人間/現実をリアルに感じられない人間」ていう00年代の病みたいなものの主人公が少ないか。『555』と『キバ』と『ディケイド』がその傾倒だけど。
 ああ、08年と09年に集中してる辺り象徴的。
 後、ループ物とハーレムメイカーをなにげに抑えてるのはポイント高いなぁ。



 うん、大体ペトロニウスさんの記事に近い結論になったかな。

1990年代から2010年代までの物語類型の変遷〜「本当の自分」が承認されない自意識の脆弱さを抱えて、どこまでも「逃げていく」というのはどういうことなのか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20100521/p1


 00年代は過去の資産を色々と有効活用しながら、二元論の超克を目指して、丘の向こうの新しい物語を目指していた――それは仮面ライダーでも同じだった。
 ……ということにしておこう。