沈黙の艦隊を戦争根絶に適用できるのか

 第2話を見た。
 普通に面白い。
 さすが黒田さん、いい脚本を書く。
 んで、さすが水島監督だ。演出がすげぇ。
 脚本意図と演出意図がガッチリと組み合うと凄く気持ちいいね。やはり。
 そして、今回の話で、ソレスタルビーイングの目指す所が「沈黙の艦隊」ぽいことを哲学さんは確信した。

 「沈黙の艦隊(Silent Security Service from the Sea))」て安全保障システムに置いて最も哲学さんが面白いと思う有効的な魔王理論だと思う。SSSSってのは戦争廃絶のシステムではなく、核廃絶の為のシステムだけれど。
 まあ、結局のところ恐怖政治。
 あるいは、神罰の体現。
 SSSSを知らない人は是非かわぐちかいじの「沈黙の艦隊」を読んで欲しい。
 あれは名作。

 沈黙の艦隊の壮大なネタバレになってしまうけれど、ここからSSSSについて説明してみる。
 SSSSとは至極単純なシステムで、核兵器が使用されたら、即座に使用した国に核を打ち返すというそれだけのシステム。
 ただし、この「報復の核」が打たれるのはどこにいるか分からない潜水艦の戦略用核ミサイル。
 もし、核ミサイルを使えば必ず核ミサイルが撃ち返されるのでまともな人間なら必ず核を打たないというシステムだ。使ったら必ず死んでしまうと言うシステムなので、恐らく永遠に核ミサイルが使われないという安全保障システムである。
 こういうシステムがある場合、核ミサイルを使おうとする人がまず考えるのは反撃をされないようにすること。それなら、反撃用の核ミサイルをうつシステムをまず先に破壊すればいいのだけれど、反撃用のミサイルを撃つのは世界中の何処の海にいるか分からない原潜(原子力潜水艦)である。しかも数がどれだけいるか分からない。なので、反撃を止めるのは不可能。なので誰も核は撃てない。
 かくて、世界は平和になりました。
 そう言うシステムである。まあ、天罰用の核ミサイルを防ぐ方法がないという前提なのだけれど。
 ただし、全ての人類の頭の上に核ミサイルがセットされると言うシステムなので、倫理的には凄く反感を受けるシステム。どちらかと言えば性悪説に近いかな。孫悟空のサークレットが念仏を唱えると頭の痛くなるという懲罰システムだけど、これは悪いことをしたら即死のシステム。
 あと、SSSSの最大の問題点は、誰がその天罰を下す為のスイッチを持つかという話。
 だってもしその天罰を下す人間が悪党なら世界は終わりである。
 その解決方法は――まあ原作の「沈黙の艦隊」を読んで欲しい。
 全てはこの物語で語られている。

沈黙の艦隊 (1) (講談社漫画文庫)
かわぐち かいじ
講談社 (1998/03)
売り上げランキング: 181083
おすすめ度の平均: 4.5
4 スタイリッシュな文庫本がお勧め
3 現実の国際政治や国際紛争の役には立たないが
4 物語自体は賞賛に値する出来


 で、このSSSSを戦争という行為に適用しようと言うのが恐らくソレスタルビーイングではなかろうか。戦争を起こしたら取りあえず皆殺し。
 これを繰り返すことによって、皆殺しが嫌になれば戦争が終わるシステム。
 とはいえ、SSSSの場合は核による天罰という絶対的な破壊がある訳だけれど、ガンダムに関して言えばそれはない。技術としては何世代か上であるとはいえ、人が操縦しているので第2話のように性能の劣る機体に対しても操縦者の力量で逆転することはありえそうだし、現状4機しかないので抑止力としては不十分。
 更に、なによりもSSSSでもあったように、戦争の抑止力を持つ存在を果たして信用できるか、ということである。誰がソレスタルビーイングになるべきか。
 正体不明の、信用のおけない若造達に「ソレスタルビーイング」を任せるべきなのか。
 だったら、世界の治安を守ってきた某国がソレスタルビーイングを担うべきではないのか……なんてね。
 果たして落としどころをどこにもっていくのか楽しみである。