「劇場版仮面ライダーカブト「GOD SPEED LOVE」ダイジェスト」
隕石が地球に落下。
瓦礫の中で呻く少女。
「助けて〜ひよりはここだよ〜」
その少女に手を伸ばす少年。
だが、手は届かず、少年の目の前で少女は瓦礫に埋もれてしまう。
少年は無念の叫びをあげる。
そして、七年の月日が流れた。
七年前に落下した隕石によって海は干上がり、地球は荒廃した。そこへ追い打ちをかけるように隕石から湧き出てきたワームが人々を襲い、それに対抗すべくZECTはマスクドライダー計画によって作られた対ワーム戦士マスクドライダーを投入。
荒廃した人類はZECTによって守られ管理される事になった。
しかし、そのZECTの支配に不満を抱き、マスクドライダーの数名はZECTを離反。ネオZECTを立ち上げ、ZECTと抗争に入った。
干上がった海にもはや生命の痕跡はなく、砂漠が広がっている。
そこへ、ゼクトに追われる三人のネオゼクトのメンバー。
ゼクトの部隊長の大和は離反したネオゼクトのライダー達にゼクトに戻れば許してやる、と言うが、ネオゼクトのライダーは聞かない。
大和は土下座までしてかつての仲間を戻そうとするが、反乱軍のリーダーたる織田は突っぱねる。ならば、戦うしかない、といい互いに変身。
大和は銅のライダー「ケタロス」となり、銀のライダー「ヘラクス」に変身した織田と戦う。それを受けて矢車と加賀美もザビーとガダックに変身し、ドレイクに変身した風間をめった打ちにする。
そこへ現れる白いカウボーイ姿の天道総司。
何者だ、と問う一同に対し、
「俺は天の道をいき、総てを司る男だ」
そう言ってカブトに変身。
「な、何故ベルトを!?」
取りあえず謎のライダーであるカブトにザビー、ドレイク、ガダックが次々と襲いかかるが、その全てをカブトはワンパンチで叩きのめす。
それを見て互角に殴り合っていた大和と織田は呆然と立ちつくす。
「より報酬の高い方に俺はついてやる」
そう言い放ち、カブトは天空に指を突き立てる。
結局天道はネオゼクトに雇われることに。
仲間から反対の声があがるものの、リーダーの織田は
「あいつの眼には闇がある。俺はそいつに賭けたい」
と突っぱねるし、
「ああいう風があってもいい」
と風間も同意する。
所かわって、サルサ。そこではひよりにプロポーズしようとする加賀美がいたがどうも上手く行かない。付き合ってもう二年にもなるのに二人は恋人からは進まない。
そんなサルサへ天道がやってきてひよりを見つけると加賀美を押しのけて持ってきた鯖を差し出して
「料理を作ってくれ」
と天道は言う。それを見て客に来ていた次長課長が生の魚だと驚く。海が干上がってるのにどこで調達したのか。
それはともかく、加賀美はサルサから天道を連れ出して
「お前、ホントにネオゼクトに雇われるつもりなのか?」
「ネオゼクトは俺が潰す。だから、お前はゼクトの情報をよこせ」
とスパイを提案。
「世の中弱い者は死ぬしかない」
と天道が言い、それをやってきたひよりが聞きつけ
「じゃあ、ボクは死ぬしかないな」
と倒れる。ひよりは隕石の時の後遺症で体が弱くなっているのだ。
ネオゼクトに帰った天道はゼクトが彗星をライダーのクロックアップエネルギーを使って呼び寄せて地球に落とす計画を立てていると報告する。彗星は氷の固まりなので、地球に落ちれば再び海が戻り、地球は豊かになるはずだ。
そうすれば、それを実行したZECTの支配力はますます強まる。
そこで、その計画をネオゼクトで横取りすることに。
夜、織田は何が目的だ、と問うと
「黄金のライダーを知っているか?」
と天道。
「ああ、出会った瞬間には既に相手を倒しているという最強のライダー。その戦いの後には必ず青い薔薇が落ちているという……」
「もし、そいつが本当に最強だというのなら……一度戦ってみたいものだな」
「ふん、それがお前の狙いか」
天道は答えずただ不敵に笑う。
加賀美はついにひよりにプロポーズするが断られる。加賀美は泣きながら、「ちょっとコートとってくる」とその場を離れる。
その隙にワームが大量出現。ひよりを襲う。
そこに何故か通りかかった天道。
「ひよりぃぃぃぃぃ!! 逃げるんだひよりぃぃぃぃ!」
凄く必死な形相でカブトに変身してワームを撃退。
ひよりの元へ行くとひよりは倒れており、駆けつけた加賀美に
「早く、病院へ運ぶんだ!」
「う、あ……ああ」
と命令する。
病院で加賀美と天道はひよりの命が残り僅かだと知らされる。
天道は落ち込む加賀美に渇を入れ、それを受けて加賀美は残り少ない命だから、と断っていたひよりに改めてプロポーズし、それを受け入れて貰う。
一方、ネオゼクトでは天道が加賀美を励ます所を見られており、拷問にあっていた。実はだが、結局天道は何も吐かない。
加賀美とひよりはサルサで慎ましげな結婚式をあげようとしていた。
そこへ大和から加賀美へ電話がくる。
「天道が裏切った。ネオゼクトの襲撃が早まった。彗星を呼ぶための衛星に行くライダーにお前が選ばれた。すぐに来い」
「……天道め!」
と。加賀美はひよりにすぐ戻る、とだけ告げて軌道エレベーターへ。
一方、予定より早く軌道エレベーター襲撃に来たネオゼクト。
出撃前に風間はサブリーダーの女性(女優:森下千里)に
「この戦いが終わったらメイクをしてくれ」
と言われ、それを快諾する。やっと本業に戻れるのだと喜ぶ風間。
決意を胸に、風間が陽動となって施設を爆破するが、妙に手応えがない。
そこへ現れるサブリーダーの女性。それは天道に疑いをかけ、拷問していた女だった。
「あなたが裏切ったのか」
「元々裏切り者が何を言う」
女の指揮によってゼクトルーパーに銃撃されるドレイク。
「ああ、私はただ……風になりたかった」
そして彼の魂は自由となった。
一方、軌道エレベーターに乗り込む大和と加賀美。二人は大気圏を突破するほどの加速を受けながら、衛星軌道上へと向かう。
一足遅れてエレベーターに辿り着いた織田と天道はゼクトルーパーに囲まれていた。
「馬鹿な、計画が漏れていたのか……」
そこに現れる矢車。
「最初からお前達は俺達に踊らされていたに過ぎない。完全なる作戦――それがパーフェクト・ミッションだ!」
「ちくしょぉぉぉ!」
銀のヘラクスに変身し、ザビーと戦う織田。
「天道! お前は先に行け! お前なら出来るはずだ!」
天道はバイクをキャストオフさせ、クロックアップする。
バイクは地上と衛星を繋ぐ軌道エレベーターを垂直に昇っていく。
加賀美は衛星に辿り着くと同時に地面にかがみ込む。急な加速に耐えきれなかったのだ。一方、大和はわずかに汗はかいているものの、平然とした様子でエレベーターのドアを開ける。
そこにあったのは――カブトのバイクだった。
「遅かったな」
「……天道! 貴様!」
大和は変身し、加賀美を先にいかせる。
カブトと銅のケタロスは狭い宇宙ステーションの中で戦うが、その戦いは激しく、壁面を破壊してしまう。二人は宇宙に投げ出されるがクロックアップしてステーションに留まり、地球に落ちる刹那の時間の中でぶつかり合う。
一方、加賀美はガダックのエネルギーを使って彗星を召還。
だが、呼び出したのは彗星だけでなく、巨大な隕石も同時に引き寄せていたのだった。
「こ、これは一体どういうことなんだ!」
愕然とする加賀美。
彗星はあっけなく隕石によって砕け散り、その破片は宇宙ステーションと衝突し、破壊した。
その余波を受けてカブトとケタロスはしがみついていた宇宙ステーションから投げ出され――地球へと落ちていった。
一方、地上では銀のヘラクスがザビーを打ち倒していた。
「まさかこの俺に、完全なる死が訪れるとはな」
そう言って矢車は地に倒れる。それが彼の最期の言葉だった。
そこへ現れるネオゼクトを裏切ったサブリーダーの女。
「そうか、お前が裏切ったのか」
「……これで終わりと思うなよ。まだZECTには大和がいる!!」
彼女がそう言った瞬間、天空から何かが降ってくる。
それは宇宙ステーションから投げ出された銅のライダーこと大和だった。
「ZECTに栄光あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
彼は叫び声と共に地上に落ちる前に燃え尽きていった。
それをぽかーん、と見つめる銀のライダーと裏切り者の女。
「…………」
「…………」
「どうやら頼みの綱の大和もやられた様だな」
「くっ……!」
裏切り者を退け、進む銀のライダー。
と、曲がり角をまがっところに――黄金のライダーが正座していた。
「……な?」
正座したまま、黄金のライダーはじろりと銀のヘラクスを睨んでくる。
「…………………………貴様が噂の最強のライダーか!
丁度いい俺が倒してやる!」
訳が判らないが取りあえずクロックアップする銀のヘラクス。
それに対し黄金のライダーは――。
『ハイパークロックアップ』
次の瞬間――気がつけば織田は地に伏せていた。圧倒的なスピードとパワー。
「く、くそう……天道さえいれば!」
そう言って織田は事切れた。その遺体の側にはそっと青い薔薇が落とされていた。
その頃カブトはバイクによって減速に成功し、なんとか地上に降りる事に成功していた。(あのバイク飛べたらしい)
地上に降り立った天道がふと下を見てみると黄金のライダーが一人でとことこと歩いている。
「…………ついに見つけた」
天道が戦いに行こうとした時、それを加賀美が押しとどめる。
「お前の目的は一体……」
と言う所で加賀美に電話が掛かってくる。
「……ひよりが?!」
「残念ながら、予定外の隕石を呼んでしまいました。しかし、ご安心ください。隕石を破壊するためにZECTはミサイルを撃ちます。これで地球に隕石が落ちる事はないでしょう」
と加賀美の父――加賀美陸は全世界に向けて発表。
テレビ放送が終わり、彼は自室でくつろぐ。
三島がやってくると陸はぽそりと呟く。
「旧約聖書に置いて……(以下略)」
「……つまり、隕石はワームを載せたゆりかご。ミサイルを撃つ事によって眠っていたワーム達は目覚め、大量のワームが地球に降り注ぐ……ということですね」
と三島が翻訳する。
ZECTは最初から彗星を呼ぶ気なんてなく、新しいワームの乗った隕石を呼び寄せるつもりだったのだ。
陸はゆっくり立ち上がると
「ネズミが紛れ込んだようだ」
「……始末します」
三島が眼鏡を外す。扉の外にはネオゼクトを裏切りZECT幹部に戻っていた女。
病院に急行するとひよりはもう今夜限りの命らしいと告げられる。
そこで、天道は自らが兄である事を告白。
病室で天道が神父役をつとめ、加賀美とひよりの結婚式が執り行われる。
指輪を交換し、二人は笑い合い――そしてひよりは朝を迎える前にこの世を去った。
朝。
そっと病室を抜け出す天道。
彼はひよりが死ぬ前に電話を受け取っていた。陸と三島の会話を盗み聞きしていた女から事の顛末を聞かされたのだ。
「天道……もう、お前しかいない」
そう言って裏切り者の女は電話の向こうで事切れた。
「行くのか天道」
「お前はひよりの側に居ろ。俺はこのひよりの居た世界を守る」
「お前の戦いは俺の戦いだ! 俺も行く!」
二人の男は笑い合い同時に叫ぶ。
「「変身!!」」
軌道エレベーターの周囲には大量のワームとゼクトルーパーが取り囲み、二人のライダーを待ち受けていた。余りの大群に軌道エレベーターは遠く見える。エレベーターの先には隕石に打ち込むためのミサイルが搭載された衛星へと繋がっているはずだ。
ミサイルの発射時刻まで残り時間は少ない。ワームの大群を相手にしている暇などない。
カブトとガダックは同時にベルトを叩く。
『クローックアップ!』
超加速でワームの大群へと突っ込んでいく二人。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
気合いの声と共に二人はワームの大群をひょいひょいっと飛び越えてワームを飛び越え、あっさりと軌道エレベーターへと辿り着き、更にそのまま自力で軌道エレベーターの内壁を三角跳びで飛び上がっていく二人。
『クローックオーーバー』
衛星に辿り着くと同時に二人は汗だくになって地面に倒れ込んだ。
上空約36,000 kmの衛星軌道までクロックアップしたままジャンプして昇ってきたのだ。当然だろう。
そこへ突如として宇宙ステーションの中を青い薔薇が吹雪き、舞う。
花吹雪の中、現れたのは黄金のライダーコーカサスだった。
「現れたな!」
二人は変身し、クロックアップする。
だが、コーカサス――
『ハイパークロックアップ』
カブトとガダックを目にもとまらないスピードでめった打ちにし、叩きのめすコーカサス。
「馬鹿な……早すぎる」
見上げればコーカサスの腰にはハイパークロックアップを可能にする秘密兵器――ハイパーゼクターが。
「あなたの狙いが最初からこれだったということは気付いてましたよ」
変身を解き、中から青い薔薇を持った男(俳優:武蔵)が現れる。
自分が最強であることを宣言し、ZECTによって地球はワームの住む星になると彼は告げる。そして、その中でも最強でいられるのならば自分はそれでも構わないと言う。
そして再び変身する黄金のライダー。
「最強は私だ!」
カブトに向けてコーカサスの必殺のライダーキックが放たれる瞬間――。
加賀美の脳裏を駆けめぐるひよりの笑顔。
「うぉぉぉぉぉおおお!」
ガダックはカブトの前に飛び出し、コーカサスのライダーキックの直撃を受け、倒れる。
「加賀美ーっ!」
天道は叫びつつもコーカサスにしがみつき、ハイパーゼクターを奪う。
「……しまった!」
そのままカブトはコーカサスを排気口に押し込み、扉を閉めた。
出せ!と扉を叩くコーカサス。
だが、カブトはエアロックを解放し、コーカサスは宇宙に廃棄された。
「おのれぇぇぇぇ」
天道は傷ついた加賀美を脱出ポットに入れ、加賀美を地球へと放った。
だがしかし、その脱出ポッドにコーカサスがしがみつく。
「私を陥れてた罪は償って貰う!」
脱出ポッドの強化ガラスをぶち破るコーカサス。生身で脱出ポッドの中にいた加賀美は真空になった船の中で静かに息を引き取った。
一方、衛星の中でカブトはハイパーゼクトをつけて、ハイパークロックアップし、ハイパーフォームへと変身をする。
「ハイパークロックアップ」
その瞬間――時空が巻き戻り、脱出ポッドを破壊する寸前のコーカサスの前にハイパーカブトが現れる。
「馬鹿な……あなたは時間すら超えるというのか!」
ハイパーカブトはコーカサスを衛星の方へと蹴り飛ばす。
そして、ハイパーライダーキックを放ち、コーカサスを衛星と衝突させ、ミサイルが誘爆し、コーカサスは宇宙の塵となった。
「何を……する気だ天道」
「ばあちゃんは言っていた。どうしようもなく不味い飯はちゃぶ台をひっくり返していいってな」
ハイパーカブトは隕石の方へと向かっていく。
もう隕石は地球の目の前だ。
地上では田所さん達がもう駄目だとあわてふためく。
そこへ加賀美が通信を送る。
「……大丈夫です、天道に任せましょう。なんたってあいつは……天の道をいき、総てを司る男ですから……」
天道は隕石に触れると同時にハイパークロックアップを敢行する。
すると、隕石はカブトと一緒に七年前にタイムスリップする。
「ほら、七年前のお仲間との再会だ」
天道は連れてきた隕石を七年前の隕石に衝突させる。
しかし、隕石の一部は壊しきれず、新宿に落下した。
一方、天道の居なくなった世界では辺り一面に白い光が宙を舞う。
「ああ、消えていく。世界が消えていく……」
呟く加賀美陸。
そして――
新宿の瓦礫の中、少年は少女に手を伸ばしていた。そこへ舞い降りるハイパーカブト。その背には妖精のような羽がある。
ハイパーカブトはベルトを少年に渡す。
少年はベルトをはめると力の限り、手を伸ばした。届かなかったはずの手が届き、少女を瓦礫から引き上げる。
「大丈夫。俺が側にいる」
そして、七年の月日が流れた。
ひよりが妖精の絵を描いて空を見上げている。
隕石の後遺症はないのか、自転車を来いでサルサに向かう。そこにやってくる天道と加賀美。
三人は笑いながら街を行き――やがて海へとたどり着く。
青い青い海を天道、加賀美、ひよりが歩く。
三人は空を見上げた。
そこにあるのは青い海と、青い空と――天の光が。
劇終