偽物語 下 感想

偽物語(下) (講談社BOX)


 ばかな……ひたぎさんが更正しただと……。

 まあ、彼女の物語としてはそこで終わるのがある種当然と言えば当然なのだけれど、貝木さんと再会したら殺される、とか真宵のことをちくられたら死ぬ、とか言われているので実のところ、彼女の刃は表面上収まっているけれど、その実本質的なものは変わってないんだろうなぁ。
 それでも、そんな彼女が少なくとも社会的に正常なおつきあいの出来る人種になったと言うのはなかなかにわかには信じがたいが、色々と感慨深いものがあるなあ。
 でも、そうなってしまうとキャラとしては持ち味がどうしても薄くなってしまうので今回出番がなかったのは当然か。いや、次回はあるはず……期待したい。


 それはそれとして、妹編。
 色々といちゃつきまくってはいたけれど、やっぱり家族は家族なんだなぁ、と言うお話。
 そして、偽物でも本物だ、と言うまあ色々とあったけど、なんだか最後の最後まで貝木さんに振り回されっぱなしな話。
 阿良々木くんの魅力とはきっと、魂というか、精神の高潔さ……あるいは、純粋さ、みたいなものなんだろうなぁ。
 彼は色々と迷うんだけど、最終的には自分の倫理をまっすぐに貫こうとする。自分が間違っていることなんて百も承知で……それでも絶対に自分の『間違ったこだわり』を貫こうとする。『間違ったこだわり』に、『間違った甘さ』を普通ならば捨ててしまうような『甘さ』を貫こうとする。それが彼の素晴らしいところだなぁ。そのためならば本当に命を惜しまない。命を惜しまず間違ったことや、甘さを貫こうとする。
 つまりはそういうことなのだろう。
 そんなものを見せられたら、うらやましくて引くしかないね(笑)

 ラノベに多いハーレム物の究極の本質は見ず知らずの女の子とかの為に自分の命を平気で差し出せるか、てなところがあると思うのだけれど。
 一番最初からして阿良々木くんは狂っている。
 まず、学校の帰りに見ず知らずの妖怪が死にかけてるのを見てしまい、その日は美少女な委員長のパンツを見て気分はルンルンだったのに自分が馬鹿だって自覚しながらその妖怪に命を差し出してしまう。
 一発で吸血鬼に惚れられてしまう訳だ。
 その後、自分を殺しに来たヴァンパイアハンターが頭からガブガブと食べられてるのを見て自分の間違いを再確認し、彼女を放置してはいけないと思いつつ、でもいざ殺そうと思ったら結局殺せなくて、自分も相手も殺さず生かさずの傷まみれのエンド。
 で、そこで委員長に人生のなんたるかを教えて貰ったなぁとか思ってたらその大事な人が猫に取り憑かれてまた命がけで戦って。
 そして、口封じに暴力を持って襲いかかってきた女の子の悩みを解決後、またまた人間ですらない迷子幽霊を助けてるところを見られて暴力女とカップル完成。
 更にはその暴力女の熱狂的な後輩に襲われつつも、結局いつものノリでその子も助ける。
 で、昔の妹の友人が苦しむのも当然顔見知りだから助けるし、そんなこんなでハーレム形成してる阿良々木くんに嫉妬した委員長がまた猫を発言させたけど、なんとか忍となかなおりして解決。
 かくて彼は恩人の一人たるメメがいなくなったものの、阿良々木くんの人助け本質を見て育った妹たちも何故か正義の味方狂いになってたけど、ボコボコにされながらも命がけで解決。
 ラストは自分の本当の妹を殺したとも言える無自覚の怪異にして自分の偽物の妹の為に命がけで戦う。
 彼は意外と軽々しく他人のために死ねる狂人だ。
 恩人である羽川の為には死ねる、と平然と言うし、家族のためなら死ねると言うし、もちろんひたぎの為に命を賭ける。
 しかも、それがぶれない。それを本気で思ってるし、本気で実行する。
 彼はいつだって「本気」。そして、それが間違ってるし偽物だって分かってる。でも、貫く。
 

 なんというか、そう言う話だった。
 うん、面白かった。
 でも、まだ続くんだな。
 次回はまさかの八九寺編2。お楽しみだ!



化物語(上) (講談社BOX)化物語(下) (講談社BOX)傷物語 (講談社BOX)偽物語(上) (講談社BOX)偽物語(下) (講談社BOX)